インドネシアのコーヒー生産量はブラジル・ベトナムに次ぐ世界3位のコーヒー生産大国だということをご存知でしたでしょうか?コーヒーの産地というとブラジルなどの南米産のイメージが強いですが、インドネシアは地理的にコーヒーベルトに属しており、コーヒーの木が育ちやすい環境にあるのです。もともとは安価なイメージの強かったインドネシアコーヒーですが、近年ではスパイシーでオリエンタルな風味がアメリカを中心に世界中のコーヒー愛好家から評価が高まっています。
今回は日本ではまだあまり知られていないインドネシアコーヒーの基本的な情報をご紹介します。

◯インドネシアコーヒーの歴史
インドネシアにコーヒーが持ち込まれたのはインドネシアがオランダの植民地だった17世紀頃、オランダ軍がジャワ島にアラビカ種のコーヒーを持ち込んだのが始まりと言われています。最初に持ち込まれたコーヒーは自然災害により全滅してしまったのですが、1830年頃にはジャワ島でプランテーションが行われ、その後はスマトラ島でもコーヒーの栽培が始まりました。しかし1860年代から19世紀にかけてコーヒーノキが枯れてしまう病気「サビ病」が感染拡大してまたしても全滅し、その後は病気に強いロブスタ種の栽培がメインに行われました。現在ではインドネシアで生産されているコーヒー豆の90%以上はロブスタ種でアラビカ種の栽培は10%以下になりました。
そして第二次世界大戦でコーヒー豆の生産は激減しましたが、大戦後にオランダから独立した後は生産量が回復して、現在は世界第3位のコーヒー生産大国となっています。

◯インドネシアのコーヒー豆生産量
インドネシアのコーヒー豆の年間生産量は約765トンで、世界第3位の生産量になります。2023年1月時点での情報では、世界のコーヒーの約7.7%がインドネシアで生産されたコーヒー豆といわれています。過去5年にわたり生産量は年々増加し続けていて、世界からの注目度の高さを感じます。
ちなみに、生産量世界一のブラジルは2,993トンとダントツで、世界第2位で東南アジアではトップのベトナムは1,845トンとインドネシアの2倍以上の生産量となっています。インドネシアのコーヒー生産量が伸びていることで、数年前まで世界第3位だったコロンビアは560トンで現在は世界第4位に後退しています。
※数値は国連食糧農業機関(FAO)の統計より

◯インドネシアでのコーヒー栽培地域
1万以上の島々からなるインドネシアですが、コーヒー豆の約70%はスマトラ島で栽培されていて、その他ではジャワ島で約12%、スラウェシ島で約10%となっています。火山が多いインドネシアは火山灰のおかげで肥沃な土地が多く、熱帯気候のために年間を通して湿度が一定のためにコーヒーの栽培に適しています。
◯インドネシアコーヒー豆の品種
コーヒーノキ属に分類される植物は129種確認されていると言われています。そのなかで「3大原種」と言われているのが「ロブスタ種」「アラビカ種」「リベリカ種」です。インドネシアではそのうちの2品種「ロブスタ種」と「アラビカ種」を栽培しています。
ロブスタ種はインドネシアで栽培されているコーヒー豆の90%を占めています。もともとインドネシアではアラビカ種を多く栽培していましたが、1990年代初めに「サビ病」が大流行しアラビカ種が大きな被害を受けてしまいました。その後は病気に強いロブスタ種の栽培が始まり、現在ではロブスタ種が主流になっています。ロブスタ種は強い苦みや香り、酸味の少なさが特徴で、アラビカ種に比べると味は劣ります。苦みが少ない品種とブレンドされることが多く、インスタントコーヒーにも使われます。
一方で、アラビカ種は高品質なコーヒー豆で世界的には多く栽培されている品種ですが、インドネシア国内では生産量が10%以下です。 インドネシア国内でも、量は少ないものの20種類以上のアラビカ種が栽培されています。特にスマトラ島の高地で栽培されている「マンデリン」やスラウェシ島の「トラジャ」が知られています。アラビカ種はクオリティの高いコーヒー豆として知られており、酸味と甘みを感じる複雑な味わいが特徴。フルーティーでフローラルなアロマを堪能できる品種で、飲んだ後にほのかな甘みも感じられる特徴があります。
このようにロブスタ種の生産量が90%以上で主、ロブスタ種は10%に満たないにも関わらず、インドネシアが世界に輸出しているコーヒーの種類・銘柄ではアラビカ種の方が多いのです。つまりインドネシア国内ではロブスタ種が、国外ではアラビカ種が主に流通しているのが実情です。

◯インドネシアコーヒー豆の種類
トラジャやマンデリンというワードを聞いたことがあるのではないでしょうか。エチオピアで生産されたコーヒー豆が通称モカといわれるように、インドネシアで生産されたコーヒー豆も生産地域によりトラジャやマンデリンといわれています。同じ品種(ロブスタ種・アラビカ種)でも栽培環境により香りや味が変化するので、栽培地域でそれぞれ特徴のある銘柄が生まれます。ここでは日本でも知られている「トラジャ」と「マンデリン」についてご紹介します。
トラジャは「高知の人」を意味する少数民族の名称です。スラウェシ島南部トラジャ地方にあるセセアン山脈の標高1,400〜2,100mという理想的な栽培環境で育てられたこのコーヒー豆は、苦味と酸味、コクのバランスがよく、フルーティーで華やかな香りも広がります。上品な味わいを好まれる方や飲みやすいコーヒーを探している方におすすめです。主に日本とアメリカに輸出されています。
栽培方法も特徴的で栽培から収穫、ハンドピック、袋詰めまで小規模農家が手間暇かけて生産しています。また、トラジャコーヒーが多くの愛好家から絶賛されているのには、厳格な等級基準で高い評価を得たものしか流通していないことが挙げられます。
トラジャの生産は第二次世界大戦以前からオランダ王室御用達に指定されるほど高い評価を受けていました。しかし、インドネシアが独立してオランダ人が去るとともにコーヒー豆栽培は衰退していき、幻のコーヒーとまで言われるようになっていました。現在はまた安定して供給されるようになり、世界中の愛好家に親しまれている銘柄です。
マンデリンはスマトラ島で収穫されるコーヒー豆で、「マンデリン族」がスマトラ島でコーヒーの栽培を始めたことが名前の由来とされています。高品質で流通量が少ないため、高級コーヒーのひとつとして有名です。
マンデリンは酸味が少なめで飲みやすいのもポイントです。深いコクがあるのでアイスコーヒーやカフェオレにも向いており、ブレンドのベースとして使われることもあります。コーヒー特有の酸味が苦手な方におすすめの銘柄です。
意外にもインドネシアはコーヒー生産の歴史があり生産量でもコーヒー大国だったんだ、とお分かりいただけたかと思います。一方で、日本はコーヒー豆の輸入量世界3位です。インドネシアコーヒーはブラジルやベトナム、コロンビアの影に隠れてしまっていますが、トラジャやマンデリン以外にも個性的で魅力的な銘柄がまだまだ存在します。このブログでは今後もインドネシアコーヒーの魅力をお伝えしたいきます。興味を持たれましたらインドネシアコーヒーを一度お試しいただけたらと思います。

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