インドネシアの特産品について(3)スパイスとフルーツ

熱帯気候のインドネシアはコーヒーやカカオだけでなく多種多様なスパイスやフルーツも有名です。当社としても日本に紹介していきたいと考えており、各地の農家さんを巡り実物を見て話し合いを行なっています。今回からスパイスとフルーツについて取り上げていきたいと思います。

◯インドネシアのスパイスの歴史と農産物の栽培拡大

 一説には世界には500種類以上のスパイスがあると言われています。そのうちの約250種類が東南アジアで収穫されていて、さらにそのなかでもインドネシアは最もスパイスの種類が豊富なことから「スパイスの母」と呼ばれています。

 15世紀から始まる大航海時代にヨーロッパでスパイスが普及しはじめましたが、なかでも「世界の4大スパイス」と呼ばれるシナモン、クローブ、ナツメグ、コショウは入手がたいへん困難でした。この時期、中世ヨーロッパでは料理に風味を加え、食べ物を保存するのに役立つスパイスが急速に広まり始めていました。既に15世紀にはインドネシア東部のモルッカ諸島が「スパイス・アイランズ(香辛料諸島)」としてヨーロッパで注目を集めるようになったと言われています。原産地が明らかになったことで、16世紀に入るとヨーロッパの国々が次々とこの地に進出を始めることになります。

 「モルッカ諸島」はインドネシア語では「マルク(Maluku)諸島」と呼ばれ、現在のインドネシア共和国のセラム海とバンダ海に分布する約1000の島々で構成されている群島です。最初にモルッカ諸島に到着したのはポルトガルで16世紀初頭のことでした。続いてスペインも進出しますが、既にポルトガルによってスパイスの産地や交易地の実権が握られていました。17世紀にはオランダが東南アジアで勢力を拡大していき、クローブとナツメグの原産地であるセイロン島とモルッカ諸島からポルトガルを追い出し、スパイスの栽培・取引の独占を始めるようになります。イギリスも進出を試みますが、香辛料貿易をめぐる対立から1623年に起こったアンボイナ事件でオランダに敗北したことをきっかけに東南アジアから撤退しました。その後イギリスはインドへ矛先を向けることになり、綿や茶を主力とした政策に切り換えていきました。その後スパイスに関してはオランダが実権を握って独占することになります。

 しかし、18世紀半ばフランス人宣教師がクローブやナツメグの苗木を密かに盗み出し、当時フランスが植民地としていたモーリシャスやザンジバル島などでの移植に成功したことで状況は一変します。オランダによるモルッカ諸島の支配は1949年正式に独立を承認されたインドネシアに譲渡されるまで続きますが、スパイスの栽培地拡大により価格や価値が下がったことで、長年にわたるスパイスをめぐる抗争は19世紀には終焉を迎えました。

 このようにモルッカ諸島にヨーロッパをはじめとする国々が進出したことで、結果としてさまざまな食材が当地にもたらされました。スペインはトウガラシやトマト、トウモロコシ、ジャガイモをメキシコから持ち込みました。ポルトガルはピーナッツ、パイナップル、サツマイモ、キャッサバをアフリカやブラジルから持ち込み、オランダはキャベツ、ニンジン、カリフラワーといった野菜を持ち込みました。さらには、インドからタマネギ、ニンニク、ナスといった野菜、クミンやショウガなどのスパイスももたらされました。

◯インドネシアのスパイス生産量

 国際連合食糧農業機関(FAO)による2020年の統計では、インドネシアのスパイス生産量は世界第5位の191,453トンで、東南アジアでは一番のスパイス生産国となっています。日本のスパイス輸入相手国の80%はアジア地域で、インドネシアからの輸入額は中国、タイ、インドに続いて第4位と重要な地位にあります。なかでもインドネシアを代表するスパイスのコショウはマレーシアに次ぐ第2位で約3,000トンとなっています。

◯インドネシアの代表的なフルーツ

熱帯雨林気候のインドネシアは世界有数のフルーツの産地で、年間を通じて多種多様なフルーツが収穫されています。それらのフルーツの多くは高い栄養価や美味しさだけではなく、食感や見た目も特徴的です。地域の文化や伝統的な料理にも欠かせない重要な食材としても活用されています。

(1)ドリアン(Durian)

インドネシアやマレーシア、タイなど東南アジア全域で栽培されていますが、特に豊富な降雨量と熱帯気候がドリアンの栽培に適しているジャワ島やスマトラ島北部のメダンが有名な産地です。

(2)マンゴスチン(Manggis)

インドネシア原産のフルーツで、主にスマトラ島やジャワ島、バリ島、スラウェシ島などで栽培されています。そのなかでもスマトラ島のメダン周辺やジャワ島のジョグジャカルタ周辺が有名な産地です。

(3)ランブータン(Rambutan)

マレーシア諸島原産でインドネシアをはじめ東南アジア地域、さらにはメキシコやグアテマラなど中央アメリカの熱帯地域で栽培されています。インドネシアではスマトラ島やジャワ島などで栽培されています。

(4)マンゴー(Mangga)

マンゴーの原産国はインドで、少なくとも4000年以上前から栽培されていたと考えられています。インドネシアではジャワ島、スマトラ島、バリ島、南スラウェシ島などの地域で栽培されています。

(5)シルサック(Sirsak)

インドネシア原産のフルーツの一つで、日本では「グラビオラ」という呼び方が一般的かもしれません。ジャワ島、バリ島、スマトラ島などで栽培が盛んです。一年中収穫できますが、5〜6月頃に最も美味しい果実が収穫されると言われます。日本では新鮮なシルサックを入手することが困難で、缶詰やジュースとして販売されています。最近は抗酸化成分が注目されていて、サプリメントとしても販売されています。

(6)パパイヤ(Pepaya)

日本でもよく知られているパパイヤは、ジャワ島やバリ島、スマトラ島やスラウェシ島など、多くの地域で栽培されています。

(7)ジャンブーアイル(Jambu Air)

日本では馴染みのないフルーツですが、インドネシアで一般的な果物です。マレー半島原産の「フトモモ科」の植物で、インドネシア語で「フトモモの水」という意味になります。ジャワ島、スマトラ島、バリ島、カリマンタン島などで収穫されます。外観は真っ赤で小さなリンゴのような形状で、英語で「Rose Apple」「Water Apple」と呼ばれます。

(8)サラック(Salak)

インドネシア原産の熱帯果実で、スマトラ島やジャワ島、バリ島などで栽培されています。皮が赤褐色で鱗状になっている外観から「スネークフルーツ」とも呼ばれています。

(9)パッションフルーツ (Markisa)

インドネシアではマルキサと呼ばれているパッションフルーツは、南スマトラ州、北スマトラ州、南スラウェシ、ランプン、西ジャワなどで栽培が盛んに行われています。

(10)ドゥク(Duku)

マレー半島南部が原産で、スマトラ島やジャワ島などで栽培されています。ブドウのような食感で味は甘いグレープフルーツのような不思議な食感のフルーツです。バリ島では「チェロリン(Ceroring)」と呼ばれ、特に甘いと言われています。

これら以外にも美味しくて珍しいフルーツがたくさんあります。別の機会にご紹介したいと思います。

インドネシアのスパイスやフルーツは、近年注目を浴びている抗酸化成分などの栄養素や美味しさ、独特な風味や香り、そして文化的な背景など、多くの魅力があります。今後も魅力あふれるインドネシアの特産品を取り上げてまいります。

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